ここ数年ワイン界では、古くからある醸造方法やワイン産地に注目するなど原点回帰の傾向があります。
そこで、当メディアでは、世界最古のワイン産地のひとつギリシャに注目し、オンラインワイナリーツアーに参加してみました!
今回、現地から案内をしてくれたのは、マスター・オブ・ワイン* たちも品質の高さを絶賛するギリシャを代表する造り手「キリ・ヤーニ」のCEOステリオス・ブタリス氏。
*イギリスに拠点を置くマスター・オブ・ワイン協会が認定するワイン業界で世界最高峰の資格。
ギリシャの乾杯「ヤマス!」でオンラインワイナリーツアーが始まりました!
5000年以上の歴史を持つ世界最古のワイン産地
ギリシャといえば青い空と白い建物、島から眺める夕日などの美しい風景、神話にヨーグルトなど、有名なものはたくさん思いつきそうですが、実は5000年以上のワインの歴史を持つ世界最古のワイン産地のひとつということはあまり知られていないですよね。
ワイン発祥の地といわれているのは、現在のコーサカス地方、ジョージアだといわれています。
■世界遺産に登録されたクヴェヴリ製法! ジョージアのワイン文化についてはコチラ
そこからレバノンなどの中東、次いでギリシャでもワイン造りが始まりました。
ギリシャ人はイタリアにワイン造りの技術をもたらし、その後フランスなどのヨーロッパの国々に広がっていったのです。
ソムリエという職業が誕生したギリシャ
まずはじめにステリオスさんから、ギリシャワインの歴史を簡潔に教えていただきました。
印象的だったのは、ソムリエ発祥はギリシャであったということ。
古代ギリシャでは「シンポジウム」の語源である「シンポジア」と呼ばれていた会合で、食事とワインを楽しみながら哲学を語り合っていました。 その会合で、ワインを水で割ってサービスしたのが「エノホイ」。 ソムリエの原型といわれています。
古代ギリシャ人はすでにこのときからワインの健康にもたらす影響を知っていて、ギリシャ神話の酒の神ディオニュソス** を崇拝していたそうです。
** 別名バッコス。 英語読みではバッカス
固有品種クシノマヴロについて
現在、ワイン造りはギリシャ全土に広がっていて、300ほどの固有品種があるそうです。
なかでも主に北ギリシャで造られている高貴なブドウ品種「クシノマヴロ」の評価は高く、イタリアの高級ワイン「バローロ」を造り出すブドウ品種、ネッビオーロと比べられることも。
アメリカのワイン業界の人たちからは「貧乏人のバローロ」もしくは「貧乏人のネッビオーロ」といわれているそうです。
……これは褒めているの? と思いましたが、できあがったワインの価格がバローロよりもお求めやすいことから、そういわれているとのことなので、どうやら誉め言葉らしいです(よかった……)。
クシノマヴロはトマトやオリーブなどの独特のアロマ、高い酸と熟成に応じて出てくるタンニンが特徴で、フルボディで芳醇なワインになるとのこと。
キリ・ヤーニではクシノマヴロに磨きをかけるため長期熟成をしているといっていました。
さて、ここからはテイスティングの様子とお料理とのペアリングをご紹介していきます!
【試飲①】キリ・ヤーニ キュヴェ・スペシャル ブリュット スパークリング
日本人が好む本格派テイストを目指して、キリ・ヤーニの輸入元、株式会社モトックスも開発試飲に加わって誕生したスパークリングワイン。
今回のオンラインワイナリツアーでは、通訳をモトックスの大澤さんが務めてくださったのですが、大澤さんはこのワインを紹介するとき、「ギリシャ版のプロセッコ*** 」と説明しているそうです。
*** スパークリングワインのカテゴリーで世界一売れている北イタリア・ヴェネト州を中心に造られるワイン。
■プロセッコの詳細はコチラの回で!
イタリアワインのソムリエでもある筆者の感想は、プロセッコほどのアロマはないものの、マスカットなどの果物の香りは確かに感じられました。
イベントを主催したWinomyさんのWebサイトによると、ブドウ品種のブレンドは、クシノマヴロ50%、シャルドネ40%、モスカート10%とのこと。
黒ブドウであるクシノマヴロ主体なので、全体的に奥行きのあるやわらかな印象を受けました。
説明をしながら、ステリオスさんがペアリングとして食べていたのが、ギリシャ(グリーク)サラダ!
実際にステリオスさんが食べていたレシピはコチラ
■グリークサラダ
【材料】
・キュウリ(大きめに輪切りにカット)
・トマト(適度な大きさにカット)
・白玉ねぎ(スライス)
・パプリカ(適度な大きさにカット)
・パセリ(細かく刻む)
【作り方】
適度な大きさにカットした野菜をボールに盛り、オリーブオイル、ワインビィネガー、塩を入れ完成。 黒オリーブやフェタチーズを入れても良い。
【試飲②】ラミニスタ 2016
2本目の試飲は、キリ・ヤーニ のフラッグシップワイン「ラミニスタ」。
クシノマヴロ100%で造られた赤ワインで、ステリオスさんは「無人島に持っていきたいワイン」というほどのお気に入り。
このオンラインツアー中もステリオスさん、どんどん飲んでました(笑)
本人も「試飲じゃなくて、普通に飲んでるけど」って笑っていました。そのくらい大好きなんですね。
香りは赤い果実、時間とともにタバコなどのワイルドな要素も出てくる。
味わいは、野生のレッドチェリー(森の中にあるような)、豊富な酸もあり、熟成の可能性を持ち、熟成に適したワインであるということを示しているとのことでした。
長期熟成向きのワインということだけあって、抜栓後すぐはタンニンがとげとげしいので、飲む数時間前にコルクを開けておくのがよさそうです。
現段階では、2日目のほうがワイン全体の調和がとれていて飲みやすく感じました。
そして、ステリオスさんがペアリングとして食べていたのはファヌミサという料理(写真右)。 ネット検索してもあがってこなかったです……。地方料理や家庭料理なんでしょうか……?
■ファヌミサ (Hanumissa)
【材料】
・牛肉(ダイス上にカット)
・茄子
・トマトソース
・パプリカ(赤・緑各1個)
・玉ねぎ 2個
・ジャガイモ
・チーズ
・パセリ
・塩、こしょう
・オリーブオイル
【作り方】
1. 鍋で牛肉の水分を飛ばし、オリーブオイルを入れ、刻んだパプリカと玉ねぎを残り入れ、数時間弱火で煮込む。
2. 茄子ダイス上に切り素揚げにする。
3. 素揚げにした茄子と煮込んだ牛肉と野菜をまぜ、耐熱容器に入れオーブンで15分焼く。
4. 蒸したジャガイモを皿に盛り、チーズを添えて完成。
今回はマスター・オブ・ワインたちが称賛するギリシャワインの造り手、キリ・ヤーニのオンラインツアーを通して、ギリシャワインの世界を少し知ることができました。
ギリシャというと海のイメージですが、山もあり、キリ・ヤーニのクシノマヴロの畑は毎晩山の後方から吹き付ける風が特有のテロワールを作り出しているそうです。
キリ・ヤーニでは、クシノマヴロの他にもギリシャの固有品種、アシルティコなどから造られたワインがあります。
また、試験的にカベルネ・ソーヴィニョンやメルロなどの国際品種も植えているそうなので、固有品種とのブレンドなど新しいワインの展開も楽しみですね。
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