多種多様な土着品種から新たな魅力を発見! ポルトガルワインの世界

こんにちは。 ワインファンです!
久しぶりにコラム公開! 大変うれしいです。

今日から9月ですが、今年の猛暑はまだまだ続きそうですね。
そんな灼熱の太陽のもと飲みたい(!?)さわやかな白ワインを生み出す産地や固有品種からエレガントな赤ワインを造り出す地域を擁する国、ポルトガルのワインを大特集!

マスター・オブ・ワインの資格も有するイギリスの有名ワイン評論家ジャンシス・ロビンソンが過去13年間に行ったテイスティングのなかでポルトガルの赤ワインを最高位にランキングするなど、品質の高さはプロフェッショナルからも折り紙つき。

今回は主要な産地のなかから3つを掘り下げていく他、6月に開催された「ポルトガルワイン グランドテイスティング TOKYO 2023」の様子を交えながらおすすめのポルトガルワインをご紹介していきます。

Contents

ポルトガルワインの特徴とは

ワインラヴァーの皆さまは一度は試したことがあると思いますが、そもそもポルトガルワインの特徴を言い表すとしたらどんなことが思いつきますか。

実はワインファンでは、前身のメディア「今晩わいん」のときから試飲会に参加したりなど何度かポルトガルワインを取り上げてきました。

その結果、以下のような特徴を実感できました。

250種以上の固有品種がある
(なので、世界屈指の多様性に富んだワインが誕生する国!)

ワインそれぞれの個性が際立っている
(品種の違いだけではない! 砂地から片岩、地中海と大西洋の影響、多様なミクロクリマがもたらすオリジナリティー!)

日本食に合わせやすい!
(食文化の共通点も多い! 天ぷらのオリジナルはポルトガルから伝わったものだった……!)

ポートワインとマデイラワインは世界3大酒精強化ワイン(1)
(意外と飲みやすいので、ポートは酒精強化ワインデビューにおすすめ!)

(1)もうひとつはスペインのシェリー

ワインファンが注目する3つの主要生産地と土着品種 / ヴィーニョ・ヴェルデ × アルバリーニョ/ダン × エンクルザード/バイラーダ × バガ

【1】ヴィーニョ・ヴェルデ × アルバリーニョ

ポルトガル語でワインを意味する「ヴィーニョ」と緑を「ヴェルデ」ということから「緑のワイン」として瞬く間に世界中に広まった白ワイン「ヴィーニョ・ヴェルデ」。
低アルコールで微発泡、ビーチリゾートに似合う軽快なワインで日本でも人気があります。

ですが、ヴィーニョ・ヴェルデとはもともとワイン名ではなく、ポルトガル北西部のスペインとの国境地帯にある、ワインの産地・ミーニョ地方のことをいいます。

ポルトガルの最大のDOC(2)ヴィーニョ・ヴェルデのなかで国際的な評価を得ている白ブドウ品種が「アルバリーニョ」です。

ヴィーニョ・ヴェルデには9つのサブ・リージョンがありますが、特殊なミクロ気候を持つモンサン・イ・メルガソのアルバリーニョ種のみで造られるワインはこの産地を象徴するワインです。

(2) 原産地名称保護

■ 以下リンクから、ヴィーニョ・ヴェルデをもっと知ろう! 日本語で読めます。

それでは、ポルトガルワイン グランドテイスティングで出合ったワインのなかでワインファンが注目した生産者をご紹介します!

アンセルモ メンデス ムロス アンティゴス アルヴァリーニョ

スタンダードライン「ムロス アンティゴス シリーズ」。 左からヴィーニョ・ヴェルデの代表品種をブレンドした「エスコリャ」、土着品種「ロウレイロ」、「アルバリーニョ」

アンセルモ メンデス氏が1998年に設立したワイナリー。 モンサンで生まれ育った彼は農業工学、醸造を学んだあとポルトガル内外でコンサルタントとして活躍しついに自身のアルヴァリーニョ造りを開始しました。

すでにワインアドヴォケイト誌などから高評価を獲得し、ヴィーニョ・ヴェルデで最高の造り手のひとりとして注目を集めています。

そんな彼が最も力を入れている品種がアルバリーニョで、今回ご紹介する「ムロス アンティゴス アルヴァリーニョ」はモンサン・イ・メルガソ地区で栽培されたアルヴァリーニョ種のみを使用して造られています。

一連の山々に囲まれた特殊なミクロ気候がモンサン・イ・メルガソ地区のブドウの成熟に必要な降水量、温度、日射量をもたらしてくれます。

グレープフルーツなどのさわやかな柑橘にレモンピールのほろ苦いニュアンスも加わり、フレッシュな印象ながら、白桃を思わせる華やかで凝縮感のある味わいが特徴的なワイン。

和食に合う品種として近年、日本のワイン業界からも注目を浴びているアルヴァリーニョですが、このワインも例外ではなく寿司や刺身などと相性がいいです。

溌剌とした酸とミネラル感も備わった暑い季節にもぴったりの1本。 モダンなヴィーニョ・ヴェルデを知るのにおすすめのアルヴァリーニョです!

【2】ダン × エンクルザード

ポルトガル中部の内陸部に位置し、四方を山に囲まれたダン地方で生まれるワインの特徴を一言でいうなら「エレガント」。

ポルトガルの銘醸地としても名を馳せているダンは標高差も大きく、標高が高いところでは夜間の冷却によってブドウがゆっくりと成熟することで豊かなアロマと酸味をもつワインが造られます。

赤ワイン用の主要品種は原産地説もあるトゥーリガ・ナシオナルですが、白ワイン用の品種でひときわ輝きを放つのが、ダン地方のスター的存在エンクルザードです!

エンクルザードはほのかな柑橘の香りに樹脂のタッチ、ミネラルなどが感じられます。 フレッシュな酸を保ちつつも濃縮されたような味わいで適度な飲みごたえもあります。

長期の熟成にも向いている品種なので、樽熟成をかけるとよりしっかりとした骨格の複雑なワインが誕生します。

キンタ・ドス・ロケス エンクルザード 2021

ゴールデンイエローで統一されたキンタ・ドス・ロケスのワインボトル

今回ご紹介する造り手は、1992年に初めてエンクルザード100%のフレンチオークで発酵させた革新的な白ワインを製造したキンタ・ドス・ロケス。

キンタ・ドス・ロケスが造ったエンクルザード100%のワインは評判を呼び、今では他の生産者も追随してエンクルザード100%のワインを生産しています。

ポルトガルの最高級の白ブドウ品種との呼び声高いエンクルザードのみを使用して造られたキンタ・ドス・ロケスの「エンクルザード 2021」は澄んだ麦わら色の外観、クセになりそうな樹脂の独特な香り、そのなかに潜むフラワリーなニュアンス、ネーブルオレンジの皮のような心地いい苦味を味わうことのできる印象的な1本です。

ペアリングは白身魚のあんかけ(あんは塩を中心としたシンプルなもの)や脂ののった焼き魚、チーズたっぷりのリゾットなどがおすすめ!

全体的にエレガントな印象ですが、コクのある味わいで長めの余韻からしっかりとした満足感を得られるワインです。

【3】バイラーダ × バガ

西に大西洋、東はダン地方と隣接しているポルトガル中部のバイラーダ地方。
DOCバイラーダは海岸沿いから少し離れた丘陵地域にあり、温暖で多湿な海洋性気候の産地です。 海からの風で畑は冷やされ、粘土と石灰岩を中心に砂質も混ざった土壌はワインの特質に影響を与え、独自の味わいを生み出します。

バイラーダ地方の赤ワインの90%を造り出すバイラーダ原産の伝統的な土着品種バガ。 バガから造られたワインは、若いうちは収れん性が強く感じられますが、成熟するにつれて柔らかくなり、ハーブやシダーウッドなどの複雑なアロマを帯びるようになります。

ルイス・パト ヴィーニャ・ヴェーリャス レッド 2018

パトはポルトガル語で「鴨」を意味していることから、ラベルに採用されている鴨のイラスト

ご紹介する造り手は現代ポルトガルを代表するワイナリーといわれるルイス・パト。 彼は家族のワイナリーを受け継いだのち、バガの可能性を見極め、従来のバイラーダワインとは異なった方法でワインを造り始めました。

濃縮度を上げるために徹底した収量制限を行い、醸造では除梗したバガを使用。 新樽のフレンチオークでワインを熟成させるという革命を起こしました。

冒頭で述べたワイン評論家ジャンシス・ロビンソンもファイナンシャルタイム誌で、ヨーロッパのベスト25ワイナリーにルイス・パトを選出(2004年2月)。 その他の有名ワインガイドなどからも高い評価を獲得しています。

試飲した「ヴィーニャ・ヴェーリャス レッド 2018」は平均樹齢40年のバガを使用したバガ種100%のワイン。 フレンチオーク樽で12ヵ月間熟成させています。さらに瓶内で長期の熟成が期待できます。

外観はフチにほんのりレンガ色を帯びた濃いめの色調のガーネット。 ハーブ、シダーウッド、モルトなどの独特な香りにスモーキーな香りも加わっています。

黒系果実のニュアンスも感じられますが、果実味を押し出したワインというよりは、タニックなワインです。2018年ヴィンテージではタンニンはこなれ始めている印象を受けました。

生産者のWebサイトによると15年くらいは飲み頃が続くので、これからさらに熟成して柔らかくなっていくポテンシャルがあります。

ペアリングはなんといってもジビエや赤身肉! お肉の脂とワインのタンニンが素晴らしい調和をみせてくれるミディアムからフルボディの個性的な赤ワインです。

アジアに最初にワインを持ち込んだ国・ポルトガルのワインでおいしいペアリングに挑戦してみては?

日本での輸入元を探しているバイラーダの生産者ブース。 バイラーダはスパークリングワインの産地としても有名

多くの土着品種が存在するなかから、厳選して3つのご紹介となりましたが、「飲んでみたい!」と思っていただけたら大変嬉しいです。

3本目にご紹介したバガ100%のワインは筆者にとって初めての香りで、驚きとともに複雑なアロマがとても魅力的でした。時間の経過とともに変化する香りも興味深かったです。 土着品種ってやっぱりおもしろいですよね。

また、歴史的にはヨーロッパから日本にはじめて訪れたのはポルトガル人で、言語や食文化など多くのものがポルトガルから伝わってきました。

そういった理由もあってか、ポルトガルワインは日本食に合わせやすいものが多い印象です。
ぜひ普段の食卓にポルトガルワインを選んでみてはいかがでしょうか。

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