こんにちは。 だいぶお久しぶりのワインファンです。
なかなか新しいコラムを執筆できず、とっっても歯がゆい思いをしていたのですが、新年にようやくコラムを皆さまにお届けすることができてうれしく思います。
今回は昨年11月27日に開催されたTastin’France(テイスティン・フランス)東京会場の模様をワインファン目線でレポート!
ワインの定番といえばフランスワイン。 伝統を重んじるイメージが強いフランスワインですが、ワインの今や進化を感じ取れる試飲会でした。 2025年はもう一度フランスワインに注目してみるのもいいかもしれません。
Tastin’France フランスワイン&スピリッツ合同試飲商談会
Tastin’France(テイスティン・フランス)は世界各国で開催される試飲商談会で、フランス貿易投資庁‐ビジネスフランスが酒類業界従事者を対象に日本では毎年春と秋の2回、東京と大阪の2都市で開催しています。
フランス各地から集結した生産者・ネゴシアンから直接ワインの話を聞けるだけでなく、未輸入アイテムを中心とした数百におよぶラインナップのなかから今のニーズに合致した新しいアイテムを発見するチャンスなのです!
試飲商談会は13:00開始でしたが、筆者は会場もあたたまった頃であろう15:00近くに到着。 フランスワインやスピリッツの生産者計38社が来日とのことでしたが、筆者はかなり大規模な試飲会の経験も何回かあったので、終了までの約1時間半でほぼすべてのスタンドを回るつもりでいました。
ところがこの計画はいい意味で崩れていくのでした……! ここから先をお楽しみに(ふふふ・・・)

シャンパーニュ最初のインド人ヴィニュロンが造るシャンパンで試飲スタート!

まず訪れたのはシャンパーニュ地方で最初のインド人ヴィニュロンとなった「シャンパーニュ・シャリオール&シャルムタン」のスタンド。
澱の上で5年間熟成されたこのシャンパンはムニエをメインにしたブレンドでしっかりとした味わいと外観の黄金色が印象的です。
2023年の夏にはイギリスのミシュランで3つ星を獲得したレストランや高級ホテルにオンリストされているそうです。
また、写真には映っていないのですが、コルクを覆うのは金属やホイルではなく、ストリングクロージャーのみ(紐をカットしてから抜栓します)。持続可能な取り組みを実践しているとのことです。
そして、ワインもさることながら、いただいた名刺やブックレットが厚みがあり豪華でした……!
ナポレオン生誕の島、コルシカのシャトーが地中海に適した品種で造る美味なワイン

続いて立ち寄ったのは、コルシカ島のワイン生産者「Château Prince Pierre NAPOLEON BONAPARTE シャトー プランス・ピエール ナポレオン・ボナパルト」。
地中海で、シチリア、サルデーニャ、キプロスに続く4番目に大きいコルシカ島ですが、なんといってもフランスの英雄ナポレオン・ボナパルトの出生地として有名ですね。
ナポレオン3世のいとこピエール・ナポレオン・ボナパルトの住居の中心だった跡地を開発し、ワイナリーを設立。 アルジェンテッラ湾とスカンドラ自然保護区に面したヴィンヤードは花崗岩由来の土壌でブドウはオーガニックとバイオダイナミック農法よって育てられています。
最初に試飲したのは、地中海を代表する品種ヴェルメンティーノから造られた白ワイン「ジョゼフ・ボナパルト」(写真左から2番目、コルシカのDNAのヴェルメンティーノ100%で造られているそうです)

筆者も夏にはフレッシュなヴェルメンティーノを好んで飲んでいるのですが、「ジョゼフ・ボナパルト」はコンクリートと木樽で合計18ヵ月熟成させているということもあり、ボリューム感や味わいに深みを感じられるしっかりめの造りになっています。
ヴェルメンティーノの特徴でもある後味に心地よい苦味も感じられて、とてもバランスのとれた白ワインでした。
写真手前の5種類のワインを試飲させていただいたのですが、どれもおいしくて、やっぱり島のワインって裏切らないなあ…… としみじみ感じました。
特に印象的だったのが、写真右から2番目の赤ワイン「アルジャンテッラ」。
スキアカレロというコルシカの固有品種を主体とし、サンソーとブレンドしています。 アルコール度数が14%もあるのに対し、口当たりは軽やかで、外観も透明感のあるルビーレッドでとても美しいんです。 小粒の赤系果実やスミレの香り、エレガントでチャーミングなワインでした!
日本にはまだ輸入されていない貴重なコルシカ島のワインを味わえて至福のひとときでした……!
南フランス リムーの芸術家オーナーが手掛ける自然派ワイン

次に向かったのは、ラングドック地方のワイナリー「Château De Gaure シャトー・ド・ゴール」。
ラングドックはフランスのなかではコスパ重視のイメージでしたが、近年、質の高いワインを造る生産者が増えてきていることから筆者も注目しているエリアです。
会場の受付でオーナーのピエールさんとすれ違った際に、「彼は芸術家なんですよ。ラベルも描かれているんです」との情報を主催者の方から伺っていて、ワインもラベルも気になっていました……!
南フランスのリムーにあるシャトー・ド・ゴールでは、2005年から有機栽培、2018年からはバイオダイナミック農法にも取り組んでいます。
ワインの味わいは全体的にとってもキレイ(澄んでいます!)。 醸造家が一番好きな品種がシュナン・ブランということからなのか、リムーの白ワインの主要品種のひとつモーザックとブレンドされている白ワインがどれもおいしく、よかったです。
フレッシュさのなかにふわっと香る花やフルーツのアクセントも魅力的。 サラダやタコやカンパチなど白身魚のカルパッチョなど軽めの食事に合いそうなので、お家に常備しておきたいくらいでした。

シャトー・ド・ゴールのワインの一部は日本に輸入されていますが、今回ピエールさんにご紹介していただいたワインはほとんど日本には入ってきていないとのことでした。 筆者はメディア関係者とお伝えしてはいたのですが、お取引き価格表をいただいてしまいました(笑)。 価格表を見る限り、日本での販売価格が乗っても、ワインラヴァーたち(特に自然派ワイン好き)には喜ばれるプライスでご提供できるのでは……? と思いました!
トレンドに基づいた革新的なワインをオーダーメイドで造る南フランスの協同組合

主催者であるビジネスフランスのプレス担当の方から教えていただいた低アルコールワインを造っている生産者のスタンドへ。
こちらのスタンドで説明してくれたのは、ワインメーカーの輸出市場をサポートする「Le frenchy」でワインディレクターを務める二コラさん。
試飲したのは「La Vicomté ラ・ヴィコンテ」のワイン。 ラ・ヴィコンテは、ラングドック地方にある4つの共同ワインセラーのグループで、1,200人の協同組合員からなる南フランスで2番目に大きなワイン事業者です。
市場のトレンドに基づいたプロジェクトを定期的に立ち上げて、消費者のニーズに寄り添ったワインを提供しています。 また、すべてのプロジェクトは社会と環境への強いコミットメントのもと行われており、ワインはHVE(1)またはオーガニック認証を受けています。
上の写真はアルコール6%の低アルコールワイン「Less But More」。
低アルコール、もしくはノンアルは日本でも需要が高まっていますよね。 ワインでもアルコールフリーや、白ワインで7~9%と比較的アルコール度数の低いものも何度か飲んでみましたが、おいしいんですが(今の技術ってすごい!)、やっぱりちょっと物足りない感じもありました。
ですが、ラ・ヴィコンテの「Less But More」はアルコール6%ながら、普通のワインと遜色ない味わいでした(白ワインの品種は有機栽培で育てられたソーヴィニヨン・ブラン!)。 おそらく6%と最初に聞いていないとそんなに低アルコールとは気がつかないと思います。
二コラさんによると、イギリスやオーストラリアでは健康志向の高まりを受けて、10年以上前から低アルコールワイン市場がにぎわっていて、アメリカでも人気が高いそうです。
残念ながらまだ日本には入ってきていないとのことですが、このワインはかなりイイですよ(ぜひ日本でも販売してほしいです……!)
食事のジャマをしない辛口で、ソーヴィニヨン・ブランらしく軽快な口当たりといきいきとした酸味と果実感のバランスが◎
部分的に脱アルコール化されていて、標準的なワインよりもアルコール度数が50%、カロリーも40%少ないそうです。また、醸造の過程で動物性食品や副産物が使用されていないので、理想的なヴィーガンワインでもあります。
さらにもう1本、興味深かったワイン「Floréal」をご紹介します!(右側の写真左から2番目)

フロレアル100%で造られているのですが、この聞きなれない品種はソーヴィニヨン・ブランとシャルドネの交配種なんです……!
気候変動を考慮し、暑さや干ばつに対してより耐性があるブドウ品種として生み出されました。
また、フランス政府の基準を満たした環境保全を推進する農業従事者/ブドウ栽培者に与えられる「HVE認証」(1)レベル3(最高レベル)を取得しているので、ブドウ畑は化学物質の使用量は少なく、生物多様性の尊重し、灌漑の水使用量の管理も徹底しています。
ワインは柑橘系から時間とともにパッションフルーツの香りへの変化を楽しめるフレッシュで口当たりのいいワイン。 食前酒として、チーズとともに。シーフード、鶏肉とも相性がいい1本です。
(1)認証機関 HVE (HAUTE VALEUR ENVIRONNEMENTALE)
高い環境価値を意味し、「生物多様性の保全」、「植物防疫戦略」、「施肥管理」、「水資源対策」の4つの分野について規定を順守した農業従事者に、与えられるもので、3段階のレベルがあります。 農業事業者を対象とした環境認証では最高レベルの認証。
あとがき
久しぶりに生産者来日の試飲会に参加することができ、とても刺激を受けました。
フランスのヴィンヤードでは環境への配慮はもうかなり前から行っていたと思いますが、さらに将来も見据えたサステナブルな取り組みなど最新のフランスワイン事情を知ることができました。
醸造に関しては、人の手をなるべく加えないという自然派ワインの造り手が増えてきていることもありますし、畑での仕事を本当に大事にしているんだなと思います。
そして、造り手たちと出会うと毎回感じるのはワイン造りへの熱意だけではなく、自然を尊重し、自分たちが受け継いできた土地を大切にしているということです。
生産者ひとりひとりとの対話はなかなか尽きることなく、約1時間半の滞在時間はあっという間に過ぎてしまいました。 なんでもっと早くこなかったんだろう……! と少しの後悔を覚えるほどでした。。
あまり多くのスタンドを回れなかったので、読者の皆さまにも少しずつのご紹介となりましたが、これを機に再度フランスワインに注目してもらえたらうれしいですね。
テイスティン・フランスは2025年も開催予定ですので、業界関係者の皆さまが参加される際はお時間の許す限り、じっくりとフランスワインの今を見届けていただければと思います……!
最後にこの有意義な試飲商談会にご招待くださった主催者の方にお礼を申し上げたいと思います。 ありがとうございました!
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