自転車のラベルでおなじみ「コノスル」をはじめ、「クマ」「ヴィニウス」などおいしさと高いコストパフォーマンスを誇るワインを市場に送り出している株式会社スマイル。
わたしたちの日常にお手頃価格でお値段以上の味わいを届けてくれる内側に迫ります!
お集まりいただいたのは、酒類営業本部の4名の方たち。
本部長 松本浩通さん / 日本ソムリエ協会認定 ソムリエ・・・スマイルのワイン全国へ紹介したひとり
営業サポート部 部長 / 杉村悠二郎さん・・・家で飲むときは和食に合わせやすい白ワインが多い
副本部長 野村一博さん / 日本ソムリエ協会認定 ソムリエ・・・ 最近好きなワインはピノ・ノワール
業務部 海外業務チーム / 青木菜摘さん・・・海外と日本の文化の違いが興味深い
まず始めにスマイルさんの酒類事業部の成り立ちを簡単に教えていただけますか
松本:1985年からワインの輸入を開始しました。 当時はワインに関していかに幅広い人に読んでいただくかという課題というがありました。
今もですけれど、リーズナブルで魅力的なワインを探し出すことによって、ワインを飲んでいただいている方々がクチコミで商品を広めていってくださるというようなかたちです。 基本的には我々スタッフがワインをテイスティングして開発していっているというところであります。
― 酒類事業部の方は何名いらっしゃるのでしょうか?
松本: 今は26名です。 酒類担当課の人数は当時5名。 自分が入社した90年代後半はちょうどワイン業界の過渡期。 ポリフェノール、健康ブーム、長生きといった赤ワインブームが起きたころでした。
野村: あと、田崎さんが世界一(1) になられたりして。
― それで徐々に社員も増えていき、輸入されるワインも増えていったということでしょうか。
松本: そうですね。 ドイツ、フランス、イタリアのワインを中心に品揃えが増えていきました。
(1) ソムリエの田崎真也さんが世界最優秀ソムリエコンクール優勝
― 現在26名の社員がいらっしゃって、どのような構成で業務を行っているのでしょうか?
松本: 大きく分けると、営業、国内業務、海外業務の3つの部門に分かれています。 営業に関しては、今までは東京と大阪の2チームでしたが、今年からは東日本を2チームに分けて、関西も含めて3チームで営業活動を行っています。 また、今年からブランドごとにブランドマネージャーを任命して、販促計画の立案と実行を任せています。
― (編成を)分けたことによって、さらに輸入する国を増やしたいとか、もしくは今までのところをもっと掘り下げたいですとか、今後の展望につながるようなところはございますか。
松本: 既存のブランドをより深く掘り下げて行きたいと思っています。 ブランドマネージャーを任命したのもそれが目的です。
入社後に印象深かったエピソードを教えていただけますか
松本: 大学で国際取引法というのを学んでいたのと、大学を卒業したあとオーストラリアに1年くらい滞在していたので、大学で学んだことと、語学と国際取引ができる仕事がしたいなと思って入社しました。
当社の主力商品になっているのがコノスルというチリのワインなのですが、入社したときは本当にまったく売れなかった(笑) それが十数年かかって全国に商品が行き渡ったということで非常に感慨深いなと思っています。
杉村: 私も海外と関わる仕事がしたいと思っていて、縁あってスマイルに入社しました。 入社して数年後、海外出張で初めてチリへ行ったときのことは印象に残っています。 飛行機を乗り継いで丸一日かけて到着して、時差ボケも大変でしたけど、ブドウ畑を見たときはその広さと美しさに圧倒されて来てよかったと感じました。
野村: 私は入社したときは違う部署にいまして、そのあと縁があって部署を移動してきました。
私はまだ日本はワインの商品は少ないと思っているので、海外のいいワインを輸入してもっと日本に浸透できたらなと、広まってほしいと頑張っています。 やっぱりワインって奥深いですし、難しいと思うんですけど、もっとわかりやすく伝えられたらなと思います。
青木: 大学で海外と日本文化の違いを研究していました。 海外のものが入ってきたり、日本のものが出ていったりするような会社に行けたらいいなと思い、商社を探して入社しました。
酒類事業部に配属されたのはたまたまですが、印象深かったできごとは、少し前にお客さまがこういう商品が欲しいというリクエストされたときのことです。 ワインはこうしよう、ラベルはこうしようとサプライヤーの方と話をして、こちらはメールでそのデータを確認しているという感じだったんですけど、実際に海外から物が運ばれて棚に並んでいるのを見たときはとても感慨深かったです。
それでは、おすすめのワインをご紹介いただけますか
杉村: 背景としては、オーガニックワインでこれを入れる前ってあんまり巷でいいイメージがなかったんです。 社内でも「有機のワインは売れませんよ、やめましょう」という意見が多くありました。
ですが、コノスルのオーガニックは飲んでみたらおいしかったんですよね。 ラベルも自転車のイラストがおしゃれで、これはウケるんじゃないか、と。
オーガニックというのを表に出していくと、ネガティブなイメージが強いから、あまりいわずにいた。 当時はオーガニックということにあまり強みはなかったんですよね、今じゃ真逆ですけど。
― 当時というと?
杉村: 2003年に最初にリリースされているので、そのころですね。 そのころは、オーガニック農法についての情報はあまり知られていなかったように思います。 現地で見聞きしたオーガニック農法の話をお客さまにすると、興味を持って聞いていただけました。
ガチョウを畑に放って害虫を駆除していること、ブドウの木から少し離れたところにカラフルな花を植えて、色に引き付けられる虫をそこに誘導していること、肥料はブドウの搾りかすを発酵させた天然の肥料を使っていること、温室効果ガスを出さないために畑のなかでは自転車で移動していることなど。
コノスルのオーガニックワインは、日本のオーガニックワイン市場の火付け役というか、最初のところで重要な役割を担ってくれたワインのひとつなんじゃないかなと思っています。
実際今、コノスルのオーガニックシリーズというのは日本に入ってきているオーガニックブランドのなかでは一番売れています。
杉村: チリは南北に長くて、北と南ではテロワールが大きく変わります。 南北に海岸山脈やアンデス山脈が走っていて、高低差による違いや太平洋を流れる寒流のフンボルト海流の影響など実に多種多様なテロワールが存在しています。
コノスルはチリでいち早くこの多様なテロワールに目をつけ、品種ごとに適した場所でブドウ育てたらもっと質の高いブドウが得られるんじゃないかということで、チリ全土からそれぞれの品種に合う土地を探しました。
我々は「適地適品種」っていいかたをしているんですけど、その適地適品種を究極に推し進めていったのがこのシングルヴィンヤードのシリーズ。 それぞれ品種に一番合っているという畑、さらにその畑のなかでもこの区画が一番いいという、区画まで限定して生産しているこだわりのシリーズです。
このピノ・ノワールは冷涼地、海沿いのサンアントニオ・ヴァレーにあるカンポ・リンド農園の第21区画のブドウだけで造っています。
― コノスルのシリーズはたくさんあると思いますが、こちらの2本を選んでいただいた理由は?
松本: 先ほど杉村が話した通りで、コノスルのなかで非常に特徴があり、比較的手ごろな価格でブドウ品種を楽しめるということでシングルヴィンヤードを、オーガニックはコノスルが自転車のラベルを一番はじめに使ったということもありますし、コノスルの象徴的なところオーガニックというのをしっかり進めているというところで、このふたつを選んだ次第です。
「ビシクレタ レゼルバ」という低価格帯(ワイン)のところでも自転車のラベルが全面に出ているんですけど、実は最初はオーガニックで自転車のインパクトをけっこう出すことができまして、それでビシクレタにも自転車を入れて明るいイメージにしようということになったんです。自転車ラベルの元祖というところもオーガニックを紹介に選んだ一因です。
松本: 最後に紹介するのはアルゼンチンのワインなんですけど、オーガニックつながりで開発してきた商品。 コノスルのオーガニックに火が付いたところで、他の国でも同じような商品がないかと探していたところこのワインに出合えました。
アルゼンチンですと中央部のメンドーサのワインが多いのですが、このワインはもうちょっと北のほうのサルタの近くのカファジャテという場所で造られています。
杉村: 2007年から取り扱いを始めて、2008年に生産者のところ(アルゼンチン)に行きました。 とにかく雨が降らないんですよね、カラっとしてて。
(写真をみせてくれながら)この山に遮られて雲が内側に入ってこないので、ワイナリーのあるこちら側はほとんど雨が降らないんですよ。 なかなか見たことのない風景でした。 かなりユニークなテロワールです。
雨がほとんど降らなくて、日照量は豊か、虫もいないし(ブドウが)病気にもなりにくい、昼夜の寒暖差が大きく、風も適度に吹いている…… 放っておいてもいいブドウができるぐらい恵まれた条件が揃っていて、ブドウ栽培にとって本当に理想郷。 この畑では「高品質なワイン『しか』造れない」というキャッチコピーを使って紹介しています。
ワイナリーは首都のブエノスアイレスからもとにかく遠いんですが、着いたらエンパナーダ(2) とかを(生産者と)一緒に食べながらリラックスするんですよ。
― おもてなししてくださったということですよね。
杉村: エンパナーダとトロンテスが本当によく合いました。 なかなか日本で(エンパナーダを)食べる機会がないので、なにがいいんだろうねっていう話だとギョーザなんですよね。
あと最近はブームが過ぎちゃいましたけど、パクチーとトロンテス(コリアンダー)の組み合わせもおすすめです。
― 理想郷という言葉が印象的ですが、畑はけっこう広いんですか?
杉村: ワイナリー近くのメインの畑はかなり広いです。 もっと標高の高いところも何ヵ所かあります。
― アルゼンチンでは大規模な生産者?
杉村: 大きいほうです。 カファジャテにあるワイナリーはある程度資本力がないと入っていけないそうで、現地ではブティック・ワイナリー(3) と呼ばれています。
― ご自身ではどういったシーンでこのワインを飲まれていますか。
杉村: 休日の昼、外で(笑) 夜というより、天気のいい日に外で昼間に飲んでいますね。
野村: 僕もホントにそうですね。
― 日差しのもとが似合うワイン?
野村: そうですね。冷やして。
(2)スペイン発祥の具入りのパン。 アルゼンチンをはじめ、多くの南米で食べられていて国よって具材や包み方は異なる
(3) 少量高品質のワイン造りを目指しているワイナリーのこと
冒頭でも少しお伺いしましたが、各ブランドを掘り下げていくということ以外に今後の展望があれば教えてください
松本: 昨年に引き続きオーガニックワインの販売に注力していくことは継続していきます。
おかげさまで(先ほど紹介したコノスルが)2年連続日本国内でのオーガニックワインのナンバーワンになって、コノスルを含めたスマイルの商品のオーガニックワインの販売もナンバーワンになりました。これから追いかけられる立場ではあるのですが、今年もトップを維持していきたいなと考えています。
なにより、まだまだワインはお客さまに求められていると思いますので、既存の商品を販売しつつも、新しいものも開発して紹介していくというのが我々の務めだと思っていますので、それは継続していきたい。
最後に、スマイルさんのコンセプトでもある「おいしくてコスパのいいワイン」を世の中に出していくにあたって、その目利きの方法を伺ってもよろしいでしょうか
松本: それいっちゃうと……。
― それは企業秘密ですか?
松本: 企業秘密というほどでもないですけど(笑)
― 実はわたし自身がスマイルさんの目利きにとても興味がありまして(笑) 例えば、御社取り扱いのフランスの(生産者)ジャン=クロード・マス(4) は「フランスワインは高い」というイメージをいい意味で覆してくれました。1,000円台のフランスワインでもちゃんとしたものが飲めるんだということが印象的でした。
あとは、近年の世界ワインのトレンドをまとめた記事に目を通すと、産地で(フランスの)ラングドックが入っているんですけれど、やはりおいしくてコスパのいい産地が出てくる傾向にありまして、そういった目利きが(スマイルさんは)一歩先を行っているのかなと個人的に感じていまして、ぜひお伺いできたらなとは思ったんですけれど。
松本: なるほど(笑) まあ、ほとんどの社員がソムリエの資格を持っている有資格者で、それぞれがいろいろなルートでワインを探してきてくるんですね。
それを全員で試飲して、価格をつけて、それが良い意味でアンバランス(品質が高くて、価格設定が安い)になっていないか、そんな商品を営業全員でテイスティングをしながら決めていっているのが一番ですかね。
お客さまへの配送の手配など、営業のサポートをする国内業務に携わるスタッフたちもほとんどがソムリエの資格を持っているので、彼らの一般的な消費者の視点というのも取り入れながら商品を選んでいくというかたちをとっています。
― 営業以外の意見も聞いて、消費者目線を忘れないということを大事にしていらっしゃるということですね。
松本: 営業がお客さまと会話をして、こういった商品があったらおもしろいよねというのを取り入れながら、自分たちも商品を探していって、それを部門の全員で試飲をして、価格設定をして、「これはいけるんじゃないのか」というのをテスト的に販売をしながら広げていくという手法をとっています。本当に基本的なところしかやっていないです。
そこがお客さまの信頼にもなっていますし、スマイルに任せれば価格的にも手ごろでおいしい商品を選べるというところですかね。
(4) ヴィニウスという銘柄で1,000円台前半から楽しめるワインが揃っている
取材後記
今から約2年半以上前になりますが、当メディアの前身メディア「今晩わいん」にてコノスルのストーリーを少しだけご紹介させていただいたことがありました。
少しずつですが、日々あがっていくPV数から、ワイン好きの皆さまがワインがもつストーリーに興味を持っているということを実感していました。
今回、コノスルの輸入元であるスマイルさんに直接お話を伺うことができ、同社を代表するコノスルとクマの現地の様子や輸入をはじめた背景などより深いストーリーを皆さまにお伝えできたのではないかなと思います。
「おいしくてコスパのいいワイン」はどのようにしてわたしたちに届くのかが垣間見えた取材でした。
筆者もはじめて「シングルヴィンヤード ピノ・ノワール」を飲んでみて、コスパの高さを肌で感じました。 赤系果実のフレッシュで親しみやすい味わいのピノ・ノワールですが、開栓して時間が経ってくると、果実がもつ自然な甘みも感じることができ、飲みやすくエレガントなワイン。 これは、お値段以上のうれしい1本でした!
コノスルは低価格帯のシリーズでももちろんおいしいのですが、ご紹介いただいたシングルヴィンヤードかなりおすすめです!
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