岩の原葡萄園・登美の丘ワイナリー・塩尻ワイナリーがマスカット・ベーリーAの魅力をトークライブで語り尽くす!

この記事は2020年06月22日に公開したものです。 ご紹介させていただいたワインは現行ヴィンテージで販売されているもしくは、販売終了になっている可能性もございます。 あらかじめご了承ください。

こんばんは! 今晩わいんです。 緊急事態宣言も解除され、徐々にではありますが、日常を取り戻しつつありますね。

ワインのイベントはオンラインが増えた印象ですが、皆さまはおうち時間のあいだになにかのオンラインイベントに参加されましたか?

今晩わいんでは、5月30日に行われた「岩の原葡萄園創業130周年記念トークライブ」に視聴参加し、日本を代表するブドウ品種「マスカット・ベーリーA」の魅力を存分に聴いてきましたよ。

サントリーグループ3ワイナリーのマスカット・ベーリーAから造るワイン
Contents

岩の原葡萄園を創業した川上善兵衛とマスカット・ベーリーA

マスカット・ベーリーAは「日本のワインぶどうの父」と呼ばれる川上善兵衛によって開発されたブドウ品種のひとつで、O.I.V.(国際ブドウ・ワイン機構)にも登録されている日本ワインにとって重要な品種です。

現在では東北から九州までさまざまな場所で栽培されているマスカット・ベーリーAは、昭和2年に誕生して以来、生産者たちが試行錯誤しながら品質向上を続けてきました。

今回はマスカット・ベーリーAの生みの親、川上善兵衛が創業した岩の原葡萄園と同じくサントリーグループである、登美の丘ワイナリー、塩尻ワイナリーのマスカット・ベーリーAから造られる合計3本のワインを試飲しながらのトークライブでした。生産者の率直な声も聴けた充実の内容は前編・後編の2回に分けてお伝えしていきます!

まずはそれぞれのワイナリーをご紹介!

岩の原葡萄園(新潟県)
トークライブの進行役は岩の原葡萄園で広報・PRを担当している今井さん。まずは、岩の原葡萄園のなかを少し案内してくださいました。

資料室で明らかになったのは、マスカット・ベーリーは “E” まであったということ! でも日の目をみたのは、AとBのみだったんだとか。 善兵衛の開発の一部が垣間見れますね。

ワイナリーの外には雪室(ゆきむろ)がありました。これは善兵衛が冷却設備のない時代に、ワイン熟成庫に雪室を併設し、雪を保存し雪による冷却を実現したものの現代版だそうです。

貯蔵している雪の解けた水を熱交換器を通し、空調機でワインを樽熟成している第二号石蔵内の温度管理に使用する他、ワインボトルを雪室内で低温貯蔵する役割も担っている

CO2の発生量を削減して環境負荷を軽減することを目的に復活した雪室は、冷却機能だけでなく、雪を直接利用したワインの熟成も行っており、ワイナリー見学時には、真夏に雪国を体感することも可能とのこと。

雪国ならではの知恵と技術を活用したエコなワイナリー、いいですね!

登美の丘ワイナリー(山梨県)
栽培技師長の大山さんが事前に撮ったブドウ畑の映像をもとに説明してくれました。

登美の丘ワイナリーのブドウ畑の一部

風通しのいい場所に位置する畑で、雑草を生やし、微生物によって、土中の水分を通しやすくしているとのこと。自然のサイクルを活かしているんですね。

そして、最大の特徴は他のふたつのワイナリーが棚栽培なのに対して、垣根栽培だということでした。

登美の丘ワイナリーでは、1樹あたりの果房数を制限することで凝縮感のあるブドウを取るため、垣根栽培にしているそうです。

トークライブが開催された5月30日に、あと1週間くらいで開花しそう…… とおっしゃっていたので、今はブドウは開花し、順調に成長しているのではないでしょうか。

塩尻ワイナリー(長野県)
普段は見学できない貴重なワイナリー内から、ワイナリー長の篠田さんがお届けしてくれました。

マスカット・ベーリーAの醸造は、発酵をステンレスタンクで行い、樽との相性がいいので、通常はフレンチオークですべて樽熟成をさせているそうです。

塩尻ワイナリーの樽熟成の様子

また、本日の試飲するワイン(塩尻マスカット・ベーリーA)ではないですが、ミズナラの樽* を使ったマスカット・ベーリーA(塩尻マスカット・ベーリー A ミズナラ樽熟成)もあるとのこと。

* 日本産の樽。大きさや焦がし具合は異なるが、ウイスキーの樽としても使われている。 白檀のような香り。オリエンタルな香りになる。

ミズナラの樽

それぞれのワイナリーのマスカット・ベーリーAの特徴

岩の原葡萄園(製造部技師長 上野さん)
2年連続夏に40℃を超えたので、酸が穏やかで、ボリューム感がある。やわらかさ、イチゴの香りが特徴。

イチゴの香りはマスカット・ベーリーAの特徴で、フラネオールという成分からなる。収穫が遅いほどこの香りが出るので、生産者はこの香りを最大限に出して、複雑味を増したいと考えているとのこと。

登美の丘ワイナリー(栽培技師長 大山さん)
食文化として、生食でもOKなものが好まれる。 ちゅるんと食べられる、さわやかなブドウ。水分が多めなんだそう(写真参照)

画像提供:山梨大学奥田研究所

塩尻ワイナリー(ワイナリー長 篠田さん)
昼夜の寒暖差があり、夜間は気温が低くなる冷涼な気候。
マスカット・ベーリーAのなかでは粒が小さめで酸が豊富。熟すまで待ってから収穫することにより、酸を抑えられる。

※実際のトーク順は、塩尻ワイナリー → 登美の丘ワイナリー → 岩の原葡萄園 でした。

オンラインテイスティング&相性のいい料理との組み合わせ

①岩の原葡萄園 有機栽培ぶどう マスカット・ベーリーA 2017

<製造部技師長 上野さんより>
すごく柔らかくてフルーティー。 タンニンも丸い。 マスカット・ベーリーAの個性を消さないように、一焼き、二焼きの樽を使用。 新樽はヴィンテージによって使い分けている。

おすすめのマリアージュは、甘じょっぱくしたすき焼き、魚の煮付け、のどぐろ(進行役の今井さんからは、上越っぽい!との声も)など。

飲むときのワインの温度は少し低いほうがワインのポテンシャルが出るとのことでしたが、このときは筆者は常温でテイスティングしました。

まろやかでイチゴの香りが華やかで調和のとれた印象でした。

後日、少し冷やした状態でもテイスティングしてみましたが、確かに軽く冷やしていても、香りも健在で、ボディに適度な厚みがあるのでおいしくいただけました。 有機栽培ぶどう100%だからかブドウ本来が持っている凝縮された果実感が口の中で存在を発揮します。

②登美の丘〈ブラック・クイーン&マスカット・ベーリーA〉2018

<栽培技師長 大山さんより>
ブレンドしているブラック・クイーンの酸が特徴で、ブラック・クイーンというだけあって、外観の色調も濃い。

2018年は暑く、酸が落ちるのが早かった。 結果的に飲みやすいワインになったとのことでした。 香りを最大限に活かす狙いで、山梨県のなかでは遅いほうでしたが、10月に収穫したそうです。

マリアージュは、ブラック・クイーンの酸に寄せて、酢豚がイチオシのようでした。 この組み合わせには、進行役の今井さんも思わず「よさそう!」とコメントしていて、想像するだけで好相性なのが予想でき、試してみたくなりました。

筆者のテイスティングの感想は、ざっくり言わせていただくなら、そうはいっても、すっぱい(笑)。  近年のエレガントなエトナロッソ(イタリア・シチリア)並みの酸の立ち方でした。

ですが、開栓翌日から少しずつ丸くなっていき、全体にこなれた印象に変化していきます。 1週間以内で毎日少しづつ飲むにはなんともいいワインだなあと思いました(あくまで筆者個人の感想です)。

③塩尻マスカット・ベーリーA 2017

<ワイナリー長 篠田さんより>
酸を残しながらも凝縮感のあるブドウが取れるそうで、ラズベリーなどの赤系果実のみずみずしい味わいが感じらる。 新樽はほとんど使用せず、2017年ヴィンテージは新樽比率3%だったとのこと。

また、茎ごと発酵させているので、味わいにシナモンなどのスパイシーさも加わるとのことです。

2017年ヴィンテージは10月の雨で完熟できなかったことも、スパイシーな感じにつながっているそうですよ。

個人的には、バランスのとれたキレイめなワインかなと思い、雨で完熟できなかったことはそこまでマイナス要因には感じませんでしたが、完熟した収穫年と飲み比べてみるのもおもしろそうですね。

おすすめのマリアージュは、みりん系の食べ物、根菜の煮物、かつおのたたき、(進行役の今井さんより)魚のフライに醤油をかけて食べるなどが挙げられました。

視聴者からの質問に生産者がお答えします!

ここからは、視聴者からの質問に生産者が直接答えてくれる貴重な質問タイムでした。
今回のトークライブのテーマであるマスカット・ベーリーAについて多くの関心が寄せられました。

Q おすすめの他社マスカット・ベーリーAはありますか?

登美の丘ワイナリー 大山さん(大山さんは全国北から南まで挙げてくれました!)

 タケダワイナリー(山形県)、ダイヤモンド酒造、マルス山梨ワイナリー (山梨県)、井筒ワイン(長野県)、都農ワイン(宮崎県)、熊本ワイン(熊本県)など。

特に井筒ワインのマスカット・ベーリーAはコンクール会場で、(何杯も!)おかわりするほどおいしかったとのことですよ。

塩尻ワイナリー 篠田さん

 ダイヤモンド酒造(山梨県)

またしても名前が挙がったダイヤモンド酒造! 今は国内の広い地域でさまざまなスタイルで造られているそうですが、新しいタイプのマスカット・ベーリーAを生みだした先駆けだと思うとのことでした。

岩の原葡萄園 上野さん

 朝日町ワイン(山形県)

おすすめポイントは、昔ながらの酸味がしっかり残っているところだそうで、新しい造りとクラシカルな造り、生産者さんによっても好みが分かれるところでしょうか。

今晩わいんではこの他社おすすめワインのなかからふたつののマスカット・ベーリーAを試飲してみました。 詳しくは近日公開予定の番外編の記事をお楽しみに♪

Q 登美の丘ワイナリーでは、マスカット・ベーリーA 100%のワインは造らないのですか?

 自信を持って造れるようになれば造りたい。今はまだ試行錯誤している。

多くの国内外のアワードを受賞している登美の丘ワイナリーがなんとも謙虚な発言!

ちなみに6月5日に発表になった「日本ワイナリーアワード2020」で最高賞の「5つ星」も獲得されています!(おめでとうございます)。

さらにいいワインを造っていきたいという造り手としての向上心もうかがえ、いつの日かマスカット・ベーリーA 単一品種のワインの誕生が楽しみですね!

Q マスカット・ベーリーAに他の品種をブレンドするなら?

岩の原葡萄園 上野さん

 岩の原では、 深雪花でやっているんですが、マスカット・ベーリーAにあまりないタンニンを補うメルロなどの欧州系のブドウ。メルロなら補いすぎなくていいと思う。

登美の丘ワイナリー 大山さん

 (川上)善兵衛のブドウとは相性がいいといわれている。ベーリー・アリカントAなどいいと思う。あとはやはり、メルロ。

視聴者のみなさん、なかなかマスカット・ベーリーAを深く掘り下げていきましたね~。 このほかにも醸造についてなど専門的な質問もありました。

未来に向けて

トークライブの最後は、各生産者がこれからに向けての抱負を語ってくれました。

まずは、塩尻ワイナリー 篠田さんから

マスカット・ベーリーAはポテンシャルのあるブドウなので、より魅力を伝えられるワインを造っていきたい。

続いて、登美の丘ワイナリー 大山さん

日本人に合うワインを造りたい…… という善兵衛の思いに立ち返りたい。
ただそれは、薄いワインを造るということではない。 樽やセニエに頼るのではなく、ブドウの力を活かしたワインを造っていきたい。

そして、岩の原葡萄園 上野さん

世界で戦えるワインを造りたい。 もちろん日本の皆さん喜んでもらえるワインであること。


見ごたえ、聴きごたえのある90分間がここで終了。
進行役の今井さん含め、各ワイナリーの皆さま、ありがとうございました。

今回のトークライブを通して、(他社おすすめマスカット・ベーリーAも含め)今晩わいんでは5種類のマスカット・ベーリーAを試飲しました。

ワインのスタイルは生産者ごとに異なり、料理や季節などを考慮すればそれぞれのシーンに合ったマスカット・ベーリーAがありそうで、これからさらにワイン好きのあいだに広がっていく可能性を感じました。

最後になりましたが、岩の原葡萄園130周年、本当におめでとうございます!

画像提供:サントリーワインインターナショナル

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